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風景写真家・松井章のブログ

パタゴニア探検史:アゴスティーニ神父の写真遺産

サレジオ会の神父=探検家

アゴスティーニ神父は、パタゴニア開拓が活況を迎えた20世紀前半の探検家だ。

サレジオ会の神父であるのだが、生涯をかけてパタゴニアの未踏の山域を歩き、写真と文章で多くの記録を残した。パタゴニアの歴史では探検家として名を馳せた有名人だ。その功績によりマゼラン海峡沿いの町・プンタアレナスの博物館では、彼の遺品を集めた大きなコーナーもあるほどだ。

アゴスティーニ神父が他の探検家と大きく異なる点は、その「写真」にある。約100年前の写真にも関わらず、現代の私たちが見ても魅入るような普遍的な魅力の写真を大量に遺したのだ。

神父自身が当時の大きなカメラ機材で撮影する姿を写した写真を見たことがある。防寒具や機材も含めて全く整わない時代でありながら、パタゴニアを隈なく写真に撮り続けるには、大変な情熱とエネルギーが必要であっただろう。

アゴスティーニ神父の代表作『パタゴニア・アンデス』

彼の作品は、立派な装丁の本となり、ブエノスアイレスで何冊も出版されている。
その代表作が『パタゴニア・アンデス』だ。

ヨーロッパでは、それまで「パタゴニア」という地域は、魔物が住むような地の果てと思われていた。アゴスティーニ神父の作品により、多くの人のロマンを掻き立てる身近な存在となったことだろう。

撮影の対象はパタゴニアの全てに及んだ。先住民、植物、草原、山、氷河。今でも入域が困難な“パタゴニア氷原”の写真も大量に残している。
一ヶ月かかるような遠征を何度も繰り返した当時のその苦労は大変なものだったはずだ。山に取りつく前に、凍てつく氷河湖を手漕ぎボートで横断したりと、山登りだけではなく、現代でいえばまるでアドベンチャーレースのような総合的な探検であったのだ。

今では記録的な価値としても非常に高い。約100年前のパタゴニアのあらゆる姿を残しているので、当時と今の比較をできるからだ。
たとえば、ペリトモレノ氷河やウプサラ氷河の写真がある。100年前のそれぞれの氷河の姿が見ると、ペリトモレノ氷河は100年前と同じ状態で、ウプサラ氷河は大きく後退したことが一目で分かる。

今でも現地パタゴニアで生きる人々にとって、アゴスティーニ神父はヒーローのような存在だ。
神父でありながら、パタゴニアの真の姿を公にした探検家であり、パイオニアなのだ。

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