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風景写真家・松井章のブログ

パタゴニア/写真展「南米大陸の幻想風景」撮影エリア紹介①

5/4-9開催「南米大陸の幻想風景/松井章 写真展」

5/4~5/9開催の「南米大陸の幻想風景/松井章 写真展 ~The Dynamic Earth: SOUTH AMERICA~」では、アンディーナトラベル創業10周年企画として、南米大陸の幻想風景をテーマに100枚の写真を展示予定です。

南米大陸の“地の果て”で、地球そのものが大きな生命体として鼓動するかのような「幻想風景」を目にすることは、私たちが生きていくうえで大切な一つの視点を育むと思います。私達が暮らす日常世界とは異なる“もう一つの世界”を知覚するために、南米大陸を巡り撮影しました

★詳しくは「写真展」専用ページをご覧ください。

パタゴニアとは


パタゴニアは南米大陸の南端部の総称です。アルゼンチンとチリにまたがるパタゴニア地方の広さは、日本の約3倍に及びます。
パタゴニアという呼び名は、1520年にマゼランが目撃した先住民に由来すると言われます。“pata”は「足」、“gon”は「大きい」を意味する「大きな足の人々(パタゴン)が住む土地」として、「パタゴニア」と呼ばれるようになりました。

実際に先住民が大きな足を持つわけではなく、彼らが履くグアナコ(ラクダ科)の毛皮の靴が大きかったために、巨大な足の巨人に見えたのではと言われます。この時代のヨーロッパでは、パタゴニアは魔物が住む異界であり、多くの人々の想像力を掻き立て小説や戯曲の題材にも使われていました。

南米の尻尾に当たるパタゴニアには、アンデス山脈が背骨のように縦断します。山脈を境に気候や地形も変わります。アンデス山脈の西側は、南極還流のもたらす湿度を含んだ偏西風により、氷河が発達して山麓には深い森が広がります。

大量の湿度はアンデス山脈に衝突することで、山脈に巨大な氷原が形成されました。山脈で湿気が落ちることで、アンデス山脈より東側には乾燥した風が吹き下りることで、広大な草原(乾燥パンパ)が形成されています。
偏西風は総じて強烈で、パタゴニアが「風の国」と呼ばれるほどに、絶えず暴風が吹き荒れます。

パタゴニアの歴史


16世紀の大航海時代から、約300年ほどはパタゴニア地方にはほとんど外国人は訪れず、先住民にとっては平穏に暮らせる最後の時代でした。19世紀に入るとパタゴニアの草原の草「コイロン」が羊の大好物であることが発見されると、“ゴールド・ラッシュ”ならぬ“ウール(羊毛)・ラッシュ”の時代が始まり、開拓が急速に進みます。

ヨーロッパからの移民は先を競うように奥へ奥へと開拓を進め、探検家はアンデス山脈を踏査しました。開拓民や牧童「ガウチョ」の移住に加えて、アメリカからは有名な銀行強盗サンダンス・キッドやブッシ・キャシディも流れ着きます。

パタゴニアに流れる独特な空気は、ある種の人々を強烈に惹きつけました。それは開拓民や探検家だけではなく、詐欺師や強盗、アナーキストもまた、この地の果てにやって来ることになりました。

多種多様な人々が一斉に輝いた時代にあって、探検家にして神父でもあるサレジオ会のアゴスティーニ神父は、パタゴニアで最も重要な人物と言えるでしょう。生涯をパタゴニアでの探検に費やし、その著作と写真は自然だけではなく消えゆく先住民の暮らしなどまで、膨大な記録を残したのです。

私がアゴスティーニ神父の著作で最も好きな話は、名作「パタゴニア・アンデス」で紹介される、ある開拓民の話です。氷河が迫る美しい谷に、その開拓民は牧場を拓きました。しかし、ある日、氷河が突然に前進を始めたのです。氷河は牧場をまるまると飲み込んでしまい、開拓民は自然の力を前に呆然とする描写は、パタゴニアの自然と人の関係を象徴するようで、最も気に入っている話です。

19世紀後半から20世紀前半にかけては、パタゴニアが最も輝いた時代かもしれません。

その後、パナマ運河の開通により大西洋と太平洋を繋ぐ航路としての役目は減り、羊毛産業も化学繊維の台頭により価格が下落して、“ウール(羊毛)・ラッシュ”の時代は幕を下ろしました。

20世紀後半、ブームが過ぎ去り静かになったパタゴニアを、イギリスの小説家ブルース・チャトウィンが独特な筆致で「パタゴニア」を著しました。紀行文学“トラベローグ”は多くの欧米人のツーリストを惹きつけます。
現在のパタゴニアは、ツーリズムによって再び世界から注目を集めています

①フィッツロイ山群


パタゴニアを代表するフィッツロイ針峰群は、アンデス山脈の東側(アルゼンチン)に位置します。天を突くようにそびえる花崗岩の一枚岩のフィッツロイ峰(3359m)とセロトーレ峰(3128m)はときに神格化されるほどの存在感で、登山やトレッキングの聖地です。フィッツロイ山群の裏側には、地球上で3番目に大きな氷原、“パタゴニア南部氷原”が広がります。

山麓から東側には、広大な草原(乾燥パンパ)が広がります。日本の2倍に及ぶ草原の大部分は私有地の牧場(エスタンシア)として分割されました。人よりも羊の方が多く住み、まるで遊牧民のように牧童「ガウチョ」達は羊を追っています。

また、アンデス山脈からは数百の氷河が「パタゴニア氷原」から流れ出しています。最も有名なペリトモレノ氷河は末端部の氷壁が高さ60m・幅3kmというとてつもないスケールです。この氷河は不思議なことに温暖化の時代にあっても、何故か後退せずに逆に前進さえするほどに活発な氷河です。

②パイネ山群

パタゴニアを代表するもう一つの山群が、パイネ山群です。最高峰グランデ(3050m)を主峰に、「角」を意味するクエルノ峰や三本の岩搭トーレス・デル・パイネ峰が林立して、山麓にはエメラルド色の湖沼群が美しい景観を作り出しています。

トーレス・デル・パイネ国立公園はパイネ山群とともに広大な草原を含めて保護されています。パタゴニアに広く生息するラクダ科のグアナコは、ここでは手厚い保護の元で生息しています。

国立公園の外では、牧場の羊の生息が優先されるために、同じ牧草を食べるグアナコは害獣として一時期は乱獲されて生息数が激減した時代もありました。

そのグアナコを捕食する幻の肉食獣“ピューマ”もまた生息しています。人前にはなかなか姿を現しませんが、グアナコが生息する場所では、ピューマに捕食されたグアナコの骸もたくさん見ることになります。

パイネ国立公園に広がる風景は、マゼランが来る前の真のパタゴニアの風景を残していると言えるでしょう

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