Loading

PHOTO-BLOG

パタゴニア南部氷原:フィッツロイから氷河創生の歴史を歩いて辿る

世界3番目の氷塊:パタゴニア南部氷原

パタゴニア南部氷原は、世界で3番目に大きな氷の塊だ。

南極やグリーンランドに次ぐ大きさと言われると、とてつもない巨大な氷の塊であることが分かるだろう。
幅30キロ、長さ300キロほどの細長い谷が、深さ1500mほども氷で埋め尽くされている。その巨大な氷原から溢れ出した氷が「氷河」となり、有名なペリトモレノ氷河のように高さ50-60mの劇的な末端部の氷壁を形成しているのだ。

南部氷原は荒々しい針峰群の裏側にあるので、その姿を望むには、峠を越えてアプローチする必要がある。今も未踏のエリアが大半を占めるほどで、南部氷原をテーマにパタゴニアを巡ることは一生を懸けることを意味するだろう。

チャルテン村を起点に、フィッツロイ山群を1周するルートは、パタゴニア南部氷原を歩く貴重なルートだ。片道だけでも約3日間かけて、氷河を遡るハードなルートだが、山上では地平線まで真っ白な絶景が広がる。“天上の楽園”とも言える絶景だが、その絶景を享受できるかどうかは、天候が味方するかどうかにもよる。運を天に任せて、激烈なパタゴニアの気候に翻弄される、パタゴニアの究極的なトレッキング・コースかもしれない。

名峰フィッツロイとセロトーレは、望む角度が刻一刻と形を変わるので、いろいろな表情を見せてくれる。セロトーレ峰の西面の直下ではキャンプするのだが、ここはフィッツロイ山群の核心部ともいえる。この秘められた山域を訪れるのは年間で50-100人もいるかどうかというほどだろう。

山麓と氷原を往復する道のりは、氷河創生の歴史を歩いて追体験できる貴重なルートだ。山上の雪原には、スノーシューで歩くほどの雪原が広がる。ここは「ビエドマ氷河」の源流域に当たる。太平洋から偏西風で流れ来る湿った空気がフィッツロイ山群に当たり、膨大な降雪が常に供給されるのだ。降り積もり、自身の雪の重さで、下部は圧縮されて密度の濃い氷が生まれる。下に行けば行くほどに、氷の中の酸素は押し出され圧縮されて、氷河特有の青い氷が生まれるのだ。
その氷が押し出されるように動き始めるのが上流域に当たる。雪原の表面は割れ目(クレバス)が目立つようになる。クレバスが増え始め歩行困難になると、氷河に押し出された土砂の堆積(サイド・モレーン)に上陸だ。氷河の中流~下流域は、広大なパタゴニア南部氷原から溢れ出した氷河が、一本の細い谷に流れ込む。上下左右で圧縮された氷河は撹拌されながら、荒々しく割れて、まさに氷の河となり湖に注ぎ込む様は、上空から鳥の目で望めば、それは青い蛇のように見えるだろう。
最後は花崗岩の岩が積もる荒涼としたガレ場のサイドモレーンを歩き、氷河が湖に崩れ落ちる末端部に到着する。

全8日間の行程で歩き、いわば氷河創生の数万年の歴史を追体験できるわけだ。

これほどのロマンがどこにあるだろうか。

関連ページ:パタゴニア南部氷原

関連ページ

パタゴニア南部氷原:ウエムル峠を越えて、ビエドマ湖へ... パタゴニア南部氷原(大陸氷床) ビエドマ氷河の歴史を辿る壮大なトレッキングも、ビエドマ湖で終了となる。 ウエムル峠を越えると展望も大きく変わる。 氷河と山の展望から、地平線まで広がる草原の展望へと変化するのだ。 コンドルが舞う谷間をおそるおそる覗くと、眼下にビエドマ氷河の末端部が見え...
紅葉のパタゴニア:フィッツロイ峰の清流と、南極ブナの森トレッキング... パタゴニア・フィッツロイ山麓が紅葉に染まる秋 パタゴニアのフィッツロイ峰の山麓にて、紅葉に紅く染まるブッシュは、ほとんど全てが南極ブナです。 地形に合わせて、高さ20mの森を形成したり、風の強い場所ではハイマツのように小さく育つこともできます。 氷河が溶けた水は鉱物を含み濁っているもの...
パタゴニア開拓の歩み:フィッツロイ山麓チャルテン村の建設... 牧羊ブームで始まる「パタゴニア開拓史」 たった100年前のパタゴニアは、未開の土地として忘れられたフロンティアであった。 この頃はヨーロッパからの移民が大量にブエノスアイレスに住み着き、今のブエノスアイレスの原型を作り上げた時期だ。 当時のパタゴニアは生産的な価値の無い場所として放...
パタゴニアの気候変動:ビエドマ氷河の急激な後退と大崩落... 急激に後退するフィッツロイ山麓のビエドマ氷河 パタゴニアの氷河といえば、巨大な氷壁が崩れる壮大な景観が有名です。 フィッツロイ峰の山麓チャルテン村の近くにあるビエドマ氷河は、ペリトモレノ氷河のように末端部の氷壁が高さ50~60m、幅は5kmに及ぶ「ビエドマ氷河」は、ペリトモレノ氷河に次い...
マルコーニ峠の氷河谷に点在する迷子石... パタゴニア南部氷原(大陸氷床) 氷河に磨き上げられた花崗岩は、登山靴でも滑ってしまうほどにツルツルになっている この硬い岩盤が削られたのは、いったい何万年前の出来事なのだろうか そして、これだけの高さまで氷河におおわれていたとしたら、かつての大陸氷床の規模はどれほどであったのか 花崗...
パタゴニア南部氷原:ビエドマ氷河とデル・ビエント峠... パタゴニア南部氷原(大陸氷床) “風の峠”デル・ビエント峠から見下ろせる小さな湖が今日のキャンプ地だ。 5日ぶりに植物の生える下界に下りてきた。湖は緑の草でみずみずしく覆われている。 上から見ると、そのキャンプ地は緑の小さな染みのようだ。 ここまで来れば大丈夫だという安堵感も嬉しい。...

パタゴニア開拓の歩み:フィッツロイ山麓チャルテン村の建設

貿易風とアマゾンが作る奇跡の絶景:レンソイス砂漠

パタゴニア

関連記事

  1. パタゴニア氷原の上空に現れる幽玄な雲

    2015.05.08
  2. パタゴニアの変化自在な「レンズ雲」の魅力/フィッツロイ山麓

    2017.06.23
  3. パタゴニア・フィッツロイ峰を車道から望む撮影ベストポイント

    2016.09.06
  4. 【今日の写真】パタゴニアの“逆さフィッツロイ”

    2015.12.23
  5. パタゴニアの希少動物「ウエムル鹿」と名峰フィッツロイ

    2017.02.18
  6. アルゼンチン伝統料理:牛肉のアサードと大草原パンパ

    2019.03.05
2019年5月
« 4月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

パタゴニア

最近の記事

アーカイブ

PAGE TOP