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風景写真家・松井章のブログ

南極の氷海に浮かぶ氷の神秘

氷河が作り出す青い氷

南極の氷海に浮かぶ氷は、青く鮮やかで、何かのオブジェのように不思議な形をしています。

氷は南極大陸の氷河に由来します。氷河の氷は、内陸に積雪した雪が何万年もかけて圧縮された氷です。

その内陸の源流地から押し流されるように、氷は氷河の一部として長い時をかけてじわじわと海に流されてきました。

圧縮されることで氷の密度は高く硬くなり、純度の高い氷は光の「青」だけを反射することから、この世の物とは思えないほどに青く、それはまるで発光しているようです。

南極で青く輝く氷は「海氷」ではなく「氷河の氷」です。氷があれほどに青く輝くまでには、数万年という時間をかけています。

何かのオブジェのような不思議な形とともに、その青く輝く色彩は、地球が作り出した無自覚な芸術品と言えるでしょう

海水の融点は氷点下以下のマイナス1.8℃ほどです。大気よりも暖かい海水がこの水温に達することはなかなか無いのですが、河川から真水が入り込むと融点が上がり凍りやすくなります。

たとえば、北海道のオホーツク海に流れ着く流氷は、ロシアのアムール川から流入する淡水の影響で融点が上がり、流氷が発生します。
しかし、長い年月を経て圧縮されていない氷は、氷河のように青く輝くことはないのです。

南極の氷海に青く輝く氷が無数に漂うのは、南極大陸から供給される莫大な氷河に由来します。オーストラリア大陸の2倍近い面積の南極大陸は、ほぼ全域が氷河に覆われているので、その氷河の規模は想像を超える面積です。

巨大な氷山を支える水面下の氷

無数の氷塊の中には、見上げるように高くビルのように巨大な“氷山”もあります。

水面に見える氷塊や氷山は、全体のわずか10%です。水面下には約9倍の体積の氷が支えています。

氷が作り出す、数万年の時をかけた音


静かな内湾をボートで進んでいると、小さな音が水面から聞こえてきます。エンジンを止めて耳を澄ますと、そのパチパチという音の源は氷であることが分かりました。

それは、氷河から流されて来た氷の内部に閉ざされた気泡が弾ける音です。周囲で海面を覆うほどに漂う氷から一斉に聞こえる音は、意識すると周囲一帯から聞こえてきました。

内陸の源流地で積雪して封じ込まれた気泡が、1万年あるいは数万年の時を経て弾ける音に包まれる経験は、極地ならではの体験です

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