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風景写真家・松井章のブログ

パタゴニア:急速に後退するビエドマ氷河

氷河の謎に満ちたメカニズムと地球温暖化

まるで生き物のように動く氷河は、前進と後退を繰り返しています。

その速度は、年に数センチであったり、ときには数百メートル移動することもあります。
温暖化の影響で、この100年で世界の平均気温は0.85℃上がったともいわれますが、パタゴニアでも明らかに影響は大きく、多くの氷河が後退・縮小を続けています。
たとえば、名峰フィッツロイ山麓の懸垂氷河であるピエドラ・ブランカ氷河の後退は著しく、この20年ほどで明らかに小さくなり、依然は見えなかった岩が露出しているのには寂しさを感じるものです

逆に、この温暖化の時代にあっても、ペリトモレノ氷河は後退せずに前進さえもする氷河です。100年前の写真と比べても氷河末端部の位置も規模も同じです。3,4年に一度、この氷河は突然数百メートルの前進を始めることもあるほどです。
温暖化により多くの氷河が縮小しているのは事実ですが、例外的な動きをする氷河もあり、そのメカニズムは今も謎に満ちているのです

後退・縮小が著しいビエドマ氷河


縮小・後退が著しい氷河の一つ、同じく名峰フィッツロイの山麓を流れるビエドマ氷河です。ペリトモレノ氷河に次ぐ規模の氷壁で有名ですが、後退する速度がとても速いことでも有名です。
年に1キロという速度で縮小しており、数年前の夏には1日で約400mほどがまとめて崩壊して消失したこともあります。

氷河が後退した場所には、まだ植物も生えずに岩盤だけが露出しています。数十万年、数百万年も氷河の底で削られていたので、岩盤はつるつるに磨かれています。氷河に削られても残る岩盤はとても固い岩なので、花崗岩であることが多いでしょう。
氷河が去ったばかりで、無機質な岩盤だけが残る世界はまるで別の世界にでもいるようです。
ビエドマ氷河でいえば、その岩盤はわずか10年、20年前までは氷に覆われていた場所です。

約3年前まではビエドマ氷河の氷上を歩く軽ハイキングが可能でしたが、氷河の動きがあまりにも激しいことから、安全の理由により今では人の入域は大きく制限されてしまいました。

氷河の後退は世界的な現象であり、氷河源流の水源そのものが減少していることを意味します。ヒマラヤやアンデス山脈、あるいはキリマンジャロなど、氷河の水は人々の農耕を支える貴重な水資源でもあります。

氷河の縮小がもたらす自然環境への影響は、これからいよいよ目に見えてくるのかもしれません。

どの氷河を訪れても、その後退・縮小を見ると感じる寂しさには慣れることがないもので、いつ来ても目に焼き付けるようにじっと見つめ、地球の壮大な歴史の刹那を記憶するために、大量に写真を撮影してしまうものです。

関連動画:パタゴニア

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