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風景写真家・松井章のブログ

「南極大陸」氷の国に躍動する生命①:ジェンツーペンギン

南半球に広く生息するペンギンとは

南極大陸を象徴する野生動物・ペンギンは、南半球で広範に生息しています。南米でいえば、ガラパゴス諸島やパタゴニア、ニュージーランドや南アフリカにも生息しています。
これらの生息域を簡単な円にしてみると、中心部は南極大陸であるのが分かるでしょう。かつて2億年前まで、南極、南米、アフリカ、オーストラリアは地続きの「ゴンドワナ超大陸」でした。この時代の名残として、南半球には、同種類の動物や植物が分布しているのです。

ゴンドワナ大陸の時代には、現在の南極大陸自体ももっと北にあり温暖でした。その後、大陸が分裂する中で、南極大陸は南へ南へと移動して、現在の凍てついた南極大陸になりました。

ペンギンの楽園・南極大陸


世界で5番目に大きな南極大陸をぐるりと囲む海岸線は12000kmに及びます。春から夏、海洋生物にとっての繁殖期には、南極に多くの動物が集まります。ペンギンはその中でも特に個体数が多く、約800万羽とも900万羽ともいわれるほどに繁栄しています。
南極を船で移動していれば、どこまでも氷に覆われていることに驚きますが、ときおり見える地肌にはくまなくペンギンがコロニーを築いているものです。

南極半島のジェンツーペンギン


南極半島は、南極大陸から突き出る巨大な半島です。この半島から“世界で最も荒れ狂う海”として有名なドレーク海峡を越えれば、約1000kmで南米大陸の南端部となります。

冬に間は南米で暮らすペンギンの多くが、春から夏にかけて南極半島で繁殖と子育てをするのですが、その中で最も数が多いペンギンがジェンツーペンギンです。
大きさとして中型のペンギンで、体長は約60~90cmくらいで、ペンギンの中で最も早く泳ぐ(時速35kim)ペンギンです

南米大陸の南端・パタゴニア地方のウシュアイア(アルゼンチン)やプンタアレナス(チリ)を出港して、約3日間かけてドレーク海峡を越えると、南極半島に到着します。

まず最初に目にする野生動物は、このジェンツーペンギンになるでしょう。岩石の剥き出しになった場所は、ほとんど全てと言えるほどに、ジェンツーペンギンのコロニー(ルッカリー)となっています。船で何日も移動する間、延年と続く海岸線で、岩石が見える場所はどこもペンギンのコロニーであることに驚きます。

ペンギンと一夜を過ごす氷上のキャンプ


南極半島で美しい氷河を望む湾で、氷の上でキャンプをしました。キャンプ地のすぐ脇はペンギンのコロニーでした。岩石の上にキャンプをしたいですが、ほぼ全ての場所にペンギンが暮らし大量の糞が付着するので、テントを張ることができるのは氷の上だけとなります
夏はわりと暖かいのですが、さすがに夜は冷え込み、マイナス6度ほどまで下がりました。

夜になるとペンギンの鳴き声(会話?)も静かになりますが、何羽かのペンギンは夜中になってもときおり鳴き声を上げます。そして耳を澄ませば、ペンギンが歩く足音さえも聞こえてきました。
ペンギンたちの野生の息吹のすぐそばで一晩を過ごせたことは、かけがえのない経験です。

ペンギンに占拠される、イギリス観測基地・ポートロックロイ


イギリスの観測基地のあるポートロックロイは、世界で最南端の郵便ポストがあることで有名です。このポートロックロイは、まるでペンギンに占拠されたかのような状態です。
人を恐れないペンギン達は、自由に往来して人の存在など全く気にならないようです。それよりも、太陽の熱がこもる岩石の上は貴重な巣となるのでしょう。

巨大な氷に四方が包まれる南極において、地肌が露出する場所は人にとってもペンギンにとっても重要な居住地なのです。

南極の生命から、感じ取る


氷に支配された南極は、生命にとってとても過酷な地域です。小さなペンギンたちが生きる姿を見れば、同じ生命として愛おしさを感じるものです。そして厳しい自然に順応する野生動物が持つ一種の気高ささえも感じるようで、南極で野生動物と出会うことは、きっと私たちの世界観に何らかの変化や認識をもたらしてくれるでしょう。
宇宙の中では芥子粒のように小さな地球は、とても脆い宝石のような星です。私たち人間の文明は一言では言えないほどに複雑に構成されていますが、地球の生命へのその小さな認識はきっと何らかの変化に繋がると思っています。

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