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風景写真家・松井章のブログ

【ペルーの祭】ワスカラン峰と山岳民族ケチュアの伝統舞踏

乾季アンデスの収穫祭

ペルーのアンデス山脈は5月から乾季を迎える。赤道から少し南に位置するために季節は日本と真逆で、秋に当たるこの季節は、アンデス各地でお祭りが催される。5月から6月の冬至にかけて、農作物の収穫を大地の神様・パチャママに感謝するための祝祭だ。年に一度の祭りを祝うために、ペルー先住民ケチュア族は多彩な民族衣装を身にまとい、競い合うように踊る。

南米随一の山岳地帯・ブランカ山群

ペルー・ブランカ山群は、南米大陸で最も山岳展望が美しいことから、“南米のスイス”との異名を持つ。壮麗な5000~6000mの氷雪峰がひしめく山域は、ワスカラン国立公園に指定されている。赤道直下の「熱帯氷河」は、山々を覆い包むほどで、この氷雪峰を南北に連なる谷を「ワイラス回廊」と呼ぶ。
ペルー最高峰ワスカラン(6768m)の山麓で最も栄える町ワラスが、ブランカ山群の基点となる。

熱帯氷河が山麓のワイラス回廊に安定的な水の供給をしていることで、2000年以上に渡り、人々は生活を営んできた。お祭りは、このアンデスの山と氷河への感謝と直結している。大地の神様・パチャママは山の神でもあるのだ。

ワスカラン山麓:小さな村のお祭り

アンデスの素朴な祭りを見るために、ブランカ山群の奥地を目指した。“アンデス・ブルー”と呼びたくなるほどに深く青い空は、アンデス高原ならではの空の色だ。高地ならではの強い陽光の下、4WDは軽快にバウンドしながら荒れた道を進む。乾いた空気の中で、ステレオから無造作に流れるラテンの音楽を聴きながら、車酔いしないように天井に頭をぶつけないように慎重に気構えて、木立から見え隠れする白い山々を見つめていた。延々と谷の中へ進むなかで、本当にこんな奥地でお祭りが開催されているのか、徐々にローカルすぎる情報を疑わしく思ってきたときに、目的の村に到着した。
誰もいない荒れた道が嘘のように、村に到着すると車が道や広場を埋め尽くし、華麗な民族衣装を身にまとう人々が練り歩いている。

アンデス山脈の先住民ケチュア族にとって、山高帽は女性のシンボルだ。特別な行事の時には、カラフルな帯が巻いたり花を付けたりする。裾の広い鮮やかなスカートとタイツ、そしてブラウスを羽織るのがアンデス山脈の女性の衣装だ。インカ文明以前のアンデスの歴史に、スペイン統治時代の名残が上書きされて、現在のアンデスの先住民の民族衣装が出来上がった。

村の中心部である教会では人々は厳かにキリスト教徒として練り歩き、広場に着くと人々はアンデスの神のために踊り始める。複雑な南米大陸の歴史は、生活や宗教のあちこちに垣間見ることができる。足に巻き付けているのは「貝」だ。足でリズムを取り大地を踏むたびに、貝が擦れ合い独特の音を発する。標高4000mの高原に貝は無いので、車の無い近代以前の時代は、貝は交易で手に入れる貴重な財産の象徴であった。

アンデス山脈の民族音楽(フォルクローレ)は日本でも有名な通りに、横笛のケーナや縦笛サンポーニャ、そしてチャランゴというギターによる賑やかな伝統的な音楽がステレオで増大されて、とてつもなく大きなボリュームで山麓に響く。ラテンの陽気なリズムと、アンデス山脈の山岳民族らしい素朴さが融合して、小さな村の祝祭は熱狂に包まれていく。

ブランカ山群の嫋やかな峰に抱かれるように、アンデスの諸部族は山とともに生きる。農作業がひと段落した乾季の初め、観光誘致のためではない純粋な祭りが、アンデス山脈のあちこちで催されているのだ。

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