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風景写真家・松井章のブログ

ペルー旅行の魅力を解説④:南米一の山岳展望“ブランカ山群”とワスカラン国立公園

ワスカラン国立公園とは

赤道から1000km南に位置するワスカラン国立公園は、南米随一の山岳展望を有するブランカ山群を中心に広がります。

南緯9度という低緯度で赤道の間近にありながら、5000~6000m級107座の峰々は巨大な氷河「熱帯氷河」に覆われています。主峰ワスカラン(6768m)は低緯度地域で雪に覆われた山としては世界最高峰に当たります。

4000m前後のアンデス高原には、ラクダ科の希少種ビクーニャやハチドリが多く生息し、東側はアマゾンまで一気に標高を下げて、大アマゾンの源流として、南米の自然を養う貴重な存在なのです。

ブランカ山群とは


アンデス山脈は、北はコロンビアから始まり、南はパタゴニアまで、南米大陸を南北に縦断する長大な7500kmの山脈です。ブランカ山群は、このアンデス山脈において、ひときわ標高が高い多くの峰々が連なるエリアです。

アンデス山脈の核心部と言うほどに名峰が集中し、南米随一の山岳展望が広がります。

ブランカ山群の「ブランカ」はスペイン語で「白い」を意味します。かつて100~200年前は、ブランカ山群は一面が雪に覆われて文字通りに真っ白な山脈であったことから名づけられました。この100年ほどは特に氷河の後退は著しく、古い白黒写真の風景と現在を見比べれば驚くほどに違いがあるでしょう。

それでも、今もなおブランカ山群に連なる峰や山麓は巨大な氷河とともに白く覆われています。

ワスカラン国立公園:熱帯氷河の秘密


赤道間近にありながら、このブランカ山群(ワスカラン国立公園)には683個もの氷河があります。世界における熱帯の氷河の中で、99%が南米のアンデス山脈に集中しているのです。

なぜこれだけの氷河が赤道地帯に存在することができるのでしょうか。

水分の源は、ブランカ山群の東側のアマゾンにあります。世界一の流域面積を誇るアマゾンのジャングルから水蒸気が上がると、偏東風によって上昇した水蒸気がブランカ山群に流れてきます。標高6000mまで屹立するブランカ山群に水蒸気が衝突することで、標高4000~6000mの山麓に降雪します。この時期が“雨季”に当り、ブランカ山群に巨大な熱帯氷河をもたらす源なのです。

これは壮大な水の循環と言えるでしょう。ブランカ山群の氷河は山麓で溶けて多くの河川として、アマゾン川の源流となります。そして大西洋まで流れる過程で、膨大な水分は水蒸気としてアンデス山脈に舞い戻ってくるのです。

アマゾン川の水分を水蒸気に転化するのが「熱帯雨林」です。木々が水分を吸い上げて、光合成とともに大気に放出されるのが「水蒸気」です。

アマゾンの熱帯雨林の破壊は、南米の風景を変える


このエコシステムと言われる自然の循環のメカニズムは、アマゾンの森林破壊とともに大きく狂おうとしています。熱帯雨林の消失とともに、膨大なアマゾン川の水はそのまま大西洋に注いでしまうでしょう。すると、ブランカ山群を始め多くのアンデス山脈の氷河は今よりももっと縮小してしまいます。そして、山麓からアマゾン川に流れる水量も減ることになります。

この循環に入ると、アマゾンは徐々に砂漠化するのかもしれません。ブランカ山群の氷河が縮小するほどに河川の水量が減るので、山麓の農家は生活できなくなるでしょう。
今でも100年前に比べると水量は減ったと言われますので、このまま氷河が縮小すると、河川が今ほどに農家を養うことは難しくなるでしょう。インカ時代よりはるか昔から数千年に渡り生活する先住民の生活を破壊しつつあるのが現状です。

ブランカ山群の基点・ワラス


ブランカ山群で基点となる都市がワラス(3052m)です。人口12万人の小さな町はペルー最高峰ワスカラン(6768m)を望み、“南米のスイス”と呼ばれることもあります。
ワラスからは日帰りハイキングを始め、テント泊トレッキングなど、無数のトレイルに行くことができます。高所順応のためにワラスに滞在する人も多く、トレッキング・シーズンの乾季はトレッキング目的のツーリストで町は賑やかになります。

ワラスで2,3日ほど連泊をして日帰りハイキングをしながら高度順応してから、テント泊トレッキングに向かうのが一般的です。

秘境・ワイワッシュ山群


ワラスから車で約7時間ほど、悪路の先にあるのが秘境・ワイワッシュ山群です。

ブランカ山群より一回り小さな山群ですが、ツーリストが少なく静かなトレッキングを楽しめます。

最高峰イェルパハ峰(6635m)を中心に屏風のように連なる山岳展望は、ヒマラヤに匹敵するような壮大な景色です。

シリーズ:ペルー旅行の魅力を解説





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