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風景写真家・松井章のブログ

チチカカ湖の民族衣装:女性の多彩な帽子

‟文明のゆりかご”チチカカ湖

標高3800mにあるチチカカ湖は、汽船が航行する湖としては世界最高所です。面積は兵庫県と同じくらいの面積で、水平線まで広がる風景を見れば、まるで海のように感じることでしょう。

チチカカ湖は南米を縦断するアンデス山脈において、最も古代文明が栄えた‟文明のゆりかご“のような場所です。アンデス山脈の支脈であるレアル山群とチチカカ湖がもたらす水資源という恵みにより、ここでは幾多の文化・文明が勃興しました。

2000年以上前の遺跡も見つかっていて、中には誰が何のために作ったのかも分からない謎の遺跡もあったりします。
チチカカ湖で興隆した古代文明の遺跡は、「石」を精巧に削る技術の高さでは一致していて、アンデス山脈各地の文化・文明に影響を与えたと考えられます。

インカ帝国もまた、チチカカ湖を‟発祥の地“と定めているほどに、重要な場所なのです。
14世紀頃に内陸のクスコを中心にケチュア族が興したインカ帝国が拡大する中で、15世紀にチチカカ湖でアイマラ族と合流すると、インカ帝国は一気に大帝国となりました。チチカカ湖は、2つの民族にとって友好の証であったのかもしれません。
また、インカ帝国を興した人々は、優れた土木技術がそもそもチチカカ湖の古代文明から受け継いだということを知っていたのでしょう。

アンデス山脈で広く分布する山高帽の文化


アンデス山脈の先住民の人々は、カラフルな服を着て、帽子を特に好みます。
その地域により帽子の特徴も異なり、実に多彩です。
今回はチチカカ湖に暮らす先住民の人々の「帽子」を紹介します。

チチカカ湖でいえば、東半分はボリビア、西半分がペルーに分かれているのですが、東側(ボリビア方面)に行くほどに、黒や茶色のフェルト製の山高帽をかぶる人々が増えてきます。さらに東の首都ラパスに行けば、ほとんどの女性はこの山高帽をかぶっています。
ボリビアで山高帽をかぶる多くの人は「アイマラ族」という先住民に属します。

フェルト製の山高帽は、19世紀半ばにイギリスで男性用の帽子として普及したのが始まりです。その帽子がアンデス山脈の女性に好まれて定着したのは、この100年ほどであるそうです。
ボリビアだけではなく、ペルーでも北中部のアンデス山脈でとてもよく似た山高帽をかぶる人々がいますので、この山高帽の文化はボリビアだけではなく、アンデス山脈に広く分布しています。

▲ペルー北部アンデス山脈:ワラス近郊のケチュア族

ケチュア族の伝統的なカラフルな帽子

チチカカ湖では西のペルー側へ向かうほどに「ケチュア族」の人々が住む割合が増えていきます。

そうすると、帽子の分布も少しずつ変わり、カラフルな刺繍の帽子を目にするようになります。

さらにチチカカ湖からインカの都クスコに近づくほどに、人々の帽子は大胆で多種多様なデザインの刺繍の帽子を目にするようになります。

これらの帽子は、スペイン侵略以前までアンデス山脈の先住民がかぶっていたオリジナルの帽子です。もともとアンデスの女性は帽子をかぶるのを好むために、山高帽も広く伝わったのでしょう。

孤島に残る黒いショールをかぶる文化

チチカカ湖を船で2時間ほど航行すると、まさに絶海の孤島のように、タキーレ島とアマンタニ島という島があります。ここでは人々は古い伝統的な生活を守り、織物文化は世界無形遺産にも指定されています。

この島に住む女性は黒いショールを好みます。一説には、この島を支配したスペイン人がスペイン南部のアンダルシア地方の出身であったことが影響したといわれています。
アンダルシア地方はイスラム教徒により数百年間も支配されたことで、イスラム文化が色濃く残ります。スペインのグラナダのアルハンブラ宮殿やコルドバのメスキータが有名なイスラムが残した建築物です。
この黒いショールもイスラム文化の影響を受けたアンダルシア地方の衣装で、はるばるチチカカ湖の絶海の孤島まで伝わったのではないかと言われています。

【動画】ペルーの絶景集:悠久のアンデス山脈と古代文明、世界遺産マチュピチュ

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