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サハマ──天と地を結ぶ聖なる山

ボリビア西部、チリとの国境にそびえるサハマ山(標高6,542m)は、アンデス高原(アルティプラーノ)にそびえる単独峰です。
標高4,000~4,500mの草原地帯から約2,000mも盛り上がるこの山は、古代から現在に至るまで、この地に暮らす先住民アイマラ族の人々にとって特別な存在であり続けています。
サハマは「山の神=アプー」が宿るとされる聖山です。その信仰の歴史は紀元前1000年頃にまで遡るともいわれます。
アイマラ族にとって、サハマは天と地、そして人と神を結ぶ橋のような役目です。
今も人々はこの山に祈りを捧げ、生活の節目には供物を捧げます。大地への感謝は日常に根付いています。
彼らの祈りは、アンデスの厳しくも豊かな自然と共に生きる知恵そのものです。
人々の暮らしと信仰に根付く、アルパカ文化

この地域は、古代からアルパカ放牧の中心地でもあります。
標高4,000~4,500mという高原の寒冷で乾燥した気候、そしてアルパカの好物である草「イチュ」が豊かに自生する環境が、放牧に理想的なのです。
アルパカは単なる家畜ではなく、宗教・経済・社会のすべてを支える存在です。
毛は織物となり、肉は食料となることもあれば、神様への供物として捧げられることもあります。
糞は、薪の乏しい高原では貴重な燃料として使われてきました。
アイマラ族の人々がアルパカに接する姿を見れば、アルパカへの愛情を大きく感じるものです。
毛刈りのときには、嫌がるアルパカを押さえつけながら、なるべく落ち着かせるために、優しく目に手を押し当てます。そこには経済性よりも共に生きるアルパカへの敬意を感じずにはいられません。

放牧されるアルパカの耳には、色鮮やかな飾り「ウィチャ」が結ばれています。これは群れの識別だけでなく、お守りとしての意味を持ちます。また、織物に描かれる模様も単なる装飾ではなく、宇宙観や神々への祈りを表す宗教的なシンボルです。
アルパカは人々の暮らしと精神世界の両方において、欠かすことのできない存在なのです。
古代文明から連綿と続く聖なる山への祈り

約2000年以上前、チチカカ湖周辺で栄えたティワナク文明も、遠く離れたこのサハマを聖なる山として崇めていました。
インカ帝国よりもはるか昔から、アンデスの人々は山に神を見出し、アルパカと共に祈りを捧げながら生きてきたのです。
サハマ山は、アイマラ族の信仰の中心の一つであり、祈りと暮らし、そしてアルパカと共に築かれたアンデスの精神文化の象徴であるのです。





























