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風景写真家・松井章のブログ

北極クルーズ⑩:トナカイの暮らす雪原

クルーズ乗船5日目PM/ビル・フィヨルド


クルーズの最終日の午後、ロングイヤービエンに帰港する前に、最後のアクティビティとして上陸してハイキングしました。

春の残雪期なのでなかなか上陸する機会は少なく、このハイキングが2回目でした。

雪原に囲まれた風景もこれが見納めとなります。

ツンドラ(永久凍土)の草原には道はほとんどなく、スポンジのようにふかふかの草の上を歩きます。

人の痕跡も気配さえも全くない風景です。

トナカイ


小さな丘を越えて、温かい雪原に登ると、トナカイの群れがいました。
まだ冬毛に覆われていて全身が真っ白です。

角がまだ生えていない子どのトナカイもいます。
あまり人を恐れないのか、人が来ても全く無視されてしまいました。

スバールバル諸島にいるトナカイは、ユーラシア大陸本土のトナカイと同種ではありますが、体はやや小型です。
食べ物が少ない反面、天敵が少ないこともあるのでしょうか。

ユーラシア大陸のスカンジナビア半島から500km以上も離れているこの島々に、どのようにして渡ってきたか。
それは氷河期に遡ります。当時、スカンジナビア半島やロシア北部からスバールバル諸島まで氷に覆われていた時代がありました。
おそらくこの時期にトナカイははるばるやってきたのでしょう。

ライチョウ


岩場にはライチョウを見ることができました。

やはりまだ冬毛に覆われていて真白です。

ベンケイソウ


太陽の熱で温まり、雪からまず顔を出すのは岩です。
岩の周りから雪が融けて、丸い輪ができています。岩の上には、紫色の花が咲いています。

スピッツベルゲン島に来て、これが初めての花でした。
おそらくベンケイソウの仲間と思われます。

セグロカモメの巣


16時過ぎ、まだまだ太陽は高いですが、鳥たちの体内時計では正しく時刻を把握しているのか、頭上の岩場には数千羽のカモメが巣に戻り、大歓声をあげていました。

また眼下の草原を見れば、小さな川でカモメが休憩しています。
▼詳しくは下記リンクにて紹介しています

静かで平和な時間もまた野生の世界の一面です。厳しい生存競争のなかでも、不思議な調和の中で暮らしている。人のいない草原で、野生動物たちと同じ風景を見ることができるのは、なんと幸せなことでしょう。

ハイキングを終えて船に戻ると、船はロングイヤービエンに帰港します。

このクルーズは、スバールバル諸島(スピッツベルゲン島)の一部を巡る船旅です。一周する旅は2倍の日数がかりますが、さらに奥深くへと様々な景色が待っています。
季節によっても風景が全く異なることからも、再びここに戻ることを考えていました。

動画「北極クルーズ」

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