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風景写真家・松井章のブログ

なぜアルパカには上の前歯がないのか ― 標高4000mに生きるための進化 ―

なぜアルパカには上の前歯がないのか

アルパカの口元を、じっと見たことがあるでしょうか。
ふわりとした毛並みの奥で、アルパカはときおり唇を持ち上げ、独特の歯をのぞかせます。

アルパカなどのラクダ科動物は反芻動物です。そのため食べ方もどこか独特で、あの愛嬌のある表情は、ゆったりとした咀嚼の動きから生まれています。
草を食べるとき、まず地面すれすれに生えた草の茎を選び、摘み取るように噛み切ります。
指のように器用に動く唇が、柔らかい部分を選び分けます。そして一度飲み込んだ草は再び口へ戻され、横方向のゆっくりとした動きで噛み砕かれます。


よく観察すると、上の前歯がないことに気づくでしょう。
下顎の前歯だけが前に伸び、上顎には硬い歯茎状の歯板(デンタルパッド)があります。
この構造は、同じアンデスの家畜であるリャマとも共通しています。
下顎の歯と歯板で草を挟み、地表に出た部分だけを刈り取る仕組みです。


標高四千メートル前後に広がるアンデス高原(アルティプラーノ)では、イチュ草と呼ばれる硬い高山性の草が生えています。
降水量は少なく、昼夜の寒暖差も大きい環境です。この高原では植生の再生は決して早くありません。
もし根から引き抜いてしまえば、次の芽吹きまで長く待たなければならないでしょう。

アルパカの歯は、草を根こそぎ奪わず、地上部だけを刈り取るために進化した構造です。
それは食べるための仕組みであると同時に、高原の植生を守る働きもしています。

愛嬌のある表情の奥には、厳しい自然と折り合いをつけながら生きてきた歴史が刻まれています。
アルパカの歯は、アンデス高原(アルティプラーノ)という環境に適応してきた証なのです。

4/17-4/23|松井章 写真展「アルパカ ~アンデスの民と生きる~」

アルパカの起源|アンデス高原で続く6000年の営み

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