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アルゼンチンで最も愛される女性「エビータ」

一国の政治・経済を動かしたファーストレディ

「エビータ!エビータ!」大統領官邸カサ・ロサーダに集まる群衆がファーストレディ「エバ・ペロン」を愛称で呼びかける。アンドリュー・ロイド・ウェーバー原作の映画『エビータ』でハイライトとも呼べる場面でしょう。
エビータは、アルゼンチンで最も愛され、同時に最も賛否両論に分かれるほどに物議をかもした人物です。大統領フアン・ペロンの大統領夫人ファーストレディとして積極的に政治に介入して、アルゼンチンの政治・経済に大きく影響を与えました。

アルゼンチン人という国民を象徴するように、社会正義に情熱的かつ感傷的、ときに破滅主義な国民像がエビータに集約されているかのようです。それゆえに半世紀以上前の人物が今も愛されているのです。その性格は同じくアルゼンチン出身であるチェ・ゲバラにも共通するもので、アルゼンチンが生み出す英雄の一モデルと言えるでしょう。
これがラテン民族の情熱というものなのか、旧宗主国スペインの名作「ドン・キホーテ」を彷彿とさせるラテン的な理想主義なのです

貧困からの成り上がりと、フアン・ペロンとの出会い

1919年にアルゼンチンの大草原パンパにある貧しいロス・トルドス村で生まれたマリア・エバ・ドゥアルテは4人の兄弟と育ちました。その美貌を生かして女優やモデルとして活躍しながら、当時アルゼンチンで大きな影響力をもった政治家フアン・ペロンと出会います。ペロンの愛人として、無学の女性は徐々に政治に進出して行きます。

救国のペロン主義

フアン・ペロンは、軍の支持を得ながら頭角を現し、第二次大戦では中立国でありながら枢軸国寄りの政策を取りました。アメリカによる強い反発で経済制裁を受けるなかで、ペロンは「救国の英雄」として祭り上げられ、ペロン支持者は「ペロニスタ」と呼ばれ、“ペロン主義”ペロニスモという言葉も生まれました。今でもペロニスモはアルゼンチンの政治に大きな影響を持っています。
実際には、ペロンの政策はいわゆる「ポピュリズム」的な傾向が強いものの、当時イギリス資本の鉄道の国有化など社会主義的な政策は労働者の支持を大きく集めました。

大統領夫人として権勢をふるう時代の到来

エビータとフアン・ペロンは1945年に結婚しますが、クーデターにより拘束されながら、大統領を目指して政治活動は活発化します。この過程で、ペロンのスポークスマンとして、エビータは政治の世界で頭角を現します。
ペロンを凌ぐ国民の支持を得る中で、エバ・ペロンは「エビータ」という愛称で呼ばれるようになります。

政権を奪取して大統領夫人となった頃がエビータの絶頂期と言えるでしょう。スペイン大統領の招待を受けて、ヨーロッパを歴訪して、ペロン大統領の代理として外交的にも活躍しました。

エビータの遺産

この時代に、エビータは後のアルゼンチンに影響する遺産を残しました。女性に投票権を与える法律の制定に尽力し、貧しい子供や老人を支援する財団を設立し、労働者の賃金の向上に貢献します。弱者を支援する左翼的な政策に巨額の資金を投入したことで、アルゼンチン経済は大きく悪化することになりました。
この後、エビータは33歳で急逝してしまい、ペロン政権も崩壊します。そうして、アルゼンチンの暗黒時代ともいえる独裁軍事政権が繰り返し現れる時代を迎え、アルゼンチン経済は今もなお続くほどに長い低迷の時代に陥るのです。

エビータが活躍した時代は、アルゼンチンが最も輝いた時代であり、同時に繁栄の終焉を意味する時代ともいえるでしょう。
そして、今なおアルゼンチンで勢力を誇るペロン主義は、アルゼンチンが半永久的に抱える理想と現実が織り成す一つの呪縛ともいえるかもしれません。

映画『エビータ』

エビータの生涯のミュージカルを映画化した「エビータ」(1996年)は、マドンナとアントニオ・バンデラスが主役を演じたことでも話題となりました。アカデミー賞で5部門にノミネートされ、作中の一曲「ユー・マスト・ラブ・ミー」は、アカデミー歌曲賞を受賞しています。
ペロンが大統領就任の時に歌う曲「アルゼンチンよ、泣かないで」のシーンでは、実際にブエノスアイレスの大統領官邸カサ・ロサーダ(ピンク・ハウス)のバルコニーで撮影されました。

聖と俗の激しい両面を内包するエビータがアルゼンチンにもたらした旋風と、生まれてから常に「戦う」ことで進んだ女性の生き様をマドンナが好演している映画です。

関連ページ:アルゼンチン

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