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風景写真家・松井章のブログ

ボリビアの万霊節(死者の日):アンデス文化とカトリックの融合

11月2日「死者の日」のセレモニー

11月2日は、キリスト教のカトリック教会で「全ての死者の魂のために祈りを捧げる日(万霊節、または死者の日、諸聖人の日)」です。この日は中南米各国で重要な祝日となっています。
スペイン語では、「Dia de los difuntos」「Dia de los muertos」「Dia de todos los santos」などと呼ばれています。
本日は、ボリビア大使館開催のこの「万霊節」のセレモニーにお招きいただき、貴重な文化を体験できました。

▲ボリビア臨時大使:ナタリア・サラサールさんと記念写真

万霊節(死者の日)とは

カトリックの教義には「原罪」という考え方があり、死者は天国に入る前に生前の罪を償う期間が必要とされています。この償いで受ける苦しみを、地上の生者が徳を積み軽減してあげる日が万霊節です。

ハロウィンはこの万霊節の一種ですが、今ではお祭りとしての行事となり、中南米の「死者の日」と異なります。ハロウィンのカボチャをくりぬく風習は古代ケルト人が起源にあるそうで、中南米の万霊節には伝わっていない異なる点と言えるでしょう。

ボリビア・アイマラ族の万霊節(死者の日)


16世紀にスペインがボリビアを占領してから、先住民アイマラ族の人々はカトリックへの改宗が強制されました。実際には、インカ以前から続くアイマラ族が持つ宗教観はカトリック教と混ざり合いながら、独自のアンデス山脈のカトリック教の祝日として完成して現在に至ります。
魂や宇宙観というボリビア人のアイデンティティとして重要な根っこの部分は、たくみに姿を変えてキリスト教と融合して、今も脈々と受け継がれているのです。

ボリビアの「死者の日」では“原罪”という考えは薄く、日本のお盆のように、年に一度“この世”に故人が帰ってくる日として供養しています。
死者の日は家族や友人が集い個人に思いを馳せるだけではなく、同時代に生きた全ての死者を弔うという意味もあるそうです。

この儀式が行われる11月初旬は、ボリビアでは春の種まきの季節です。“この世”に戻った死者は、種まきから収穫までの数ヶ月間を見守ってくれると考えられています。そして収穫後の乾季の始めに“あの世”に戻るのです。
アンデス山脈の先住民の信仰では、生と死の間は緩く断絶ではないという考えが根底にあるのでしょう。

様々なお供え物を飾る見事な祭壇


祭壇(メサ)には、たくさんの供物を置きます。
祭壇の天井となる布は、山を模して「アチャチーラ」と呼ばれています。アンデス山脈の先住民が古代から受け継ぐ自然崇拝(アニミズム)がキリスト教と融合した印しのようなものです。山は人を守る聖なる存在として、今も信仰の対象です。
「アチャチーラ」の山頂部分にはキリスト教の十字架が飾られて、聖なる太陽のシンボルも見られます。

祭壇には、動物を形どったパン、バナナ、オレンジ、チョコレートなどを供え、祭壇の横には花を飾ります。
祭壇が階段状になっているのは、死者が降りてくるための階段となっています。ロウソクには死者がこの祭壇を見つかるために照らす役目があります。

人形パン「タンタワワ」


祭壇の中央部に飾る顔付きのパンは「タンタワワ」と呼ばれます。個人を偲んで飾られるパンで、訪問者へのお礼として渡されたりします。
先住民アイアマラ族の言葉で「タンタ」はパンを意味し、「ワワ」は子供を意味するそうです。

【動画】ボリビア絶景集:ウユニ塩湖~アンデス~チチカカ湖旅行/癒しの風景写真

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