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パタゴニアの民俗史③ 大開拓時代の到来

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19世紀終盤から始まる「大開拓時代」ともいえる、パタゴニアの転換期は、最も躍動的であった時代です。まだ未知の山域が広がり、その山域に踏み込む人もなく未知は未知として残り、少しずつ羊のための牧場開拓地が広がっていきます。
19世紀終盤から20世紀前半にかけてのパタゴニアは、伝説・情熱・冒険に満ちた時代でした。それぞれが自身の人生を切り開くために、厳しい自然に単身で踏み込んでいったのです。
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チリ・パタゴニアでは、メネンデス家のような大牧場が発展し、貴族のような豪奢な家族がいくつも現れます。その下で働く牧童達は、その牧場に隷属するような形となってしまい一種の階級制度となってしまいます。アルゼンチンでは、牧童をガウチョと呼びますが、チリではバケリートと呼びます。牧童自身の文化があり、一労働者であっても広大なパタゴニアの大地で羊を管理する彼らには、誇りがあります。パタゴニアの象徴といえるでしょう。タフで、情熱と哀愁を同時に感じさせ、そして愛嬌がある。
牧童の訛りの強い独特なスペイン語は、非常に難しいです。あの訛りの起源は、まだ私の宿題です。
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最南端の町ウシュアイアのあるフエゴ島では、ウシュアイア近くに、ハーバートン牧場が開かれます。ハーバートン牧場の発端となったのは、ブリッジス家の初代トマス・ブリッジスです。彼は、先住民へのキリスト教の布教を目的に19世紀中盤に住みつきました。当時は、ヨーロッパから来た一攫千金目的のアザラシの猟師達が周辺に訪れるだけの時代でした。布教というキリスト教神父の善意は、先住民撲滅を目指すロカ将軍の意図に利用されたこともあります。非合法な先住民の虐殺はパタゴニア中で絶えず、また白人がもたらした「はしか」流行が原因で多くの先住民が死んでしまいました。20世紀中盤以降のパタゴニア史に先住民が登場しないのは、先住民が殲滅されてしまったからです。
先住民にとっては、まさに暗黒時代であった当時の歴史は、現在パタゴニアでは正しく認識されています。しかし、すでに純血な先住民は皆無であり、先住民そのものが過去の歴史となり、民族復興はありえません。これも一つの現実です。
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そのようなパタゴニアの一大変革期に、アルゼンチン・南部パタゴニアにも、開拓民がやってきます。ヨーロッパ各地からやって来た彼らは、数件の店があるだけのカラファテ村を足がかりに、アルゼンチン湖やビエドマ湖周辺にいくつもの牧場を拓きます。当時の物資の流通は、東へ約300kmにある大西洋岸のリオ・ガジェゴス村が中心でした。
当時「極南」と呼ばれたカラファテ周辺・サンタクルス州に、パタゴニア探検史に重要な役割を果たす牧場の登場です。当時のカラファテには、まともな医療施設もない時代です。全て自分のことは自分でする時代であったのです。
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ペリト・モレノ氷河の北、ウプサラ氷河の横の谷では、マスターズ夫妻がたった二人で「クリスティーナ牧場」を作ります。カラファテ村からは、アルゼンチン湖の対岸にあるので、この土地に行くのは大変な時代でした。パタゴニアの強風が吹き荒れ、氷河から崩れた氷塊を除けながら渡ります。収穫した全ての羊毛を積んでカラファテに向かう途中で、船が沈んでしまったこともあるそうです。この谷の開拓の間にもすでにウプサラ氷河の後退は始まっていたそうです。氷河の後退が人類の産業による温暖化によるものだけなのかどうか、氷河の後退ノメカニズムは今も謎であり、もしかしたらこの100~200年は氷河の後退期に入っているとも考えられます。
アルゼンチン湖の北にあるビエドマ湖周辺では、レオナ牧場やヘルシンガー牧場が拓かれます。特に交通の要衝であったレオナ牧場には、様々な人が訪れ、アメリカで有名な強盗サンダンス・キットやブッチ・キャシディも逃亡して訪れます。
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ビエドマ湖の北のフィッツロイ山麓には、アンドレス・マドセンが牧場を拓きます。彼は、デンマークからたった一人で来て、牧場を拓いたのです。ヨーロッパと南米の間を結ぶ水夫など様々な仕事を転々としながら、パタゴニアに流れ着いたのです。
半径数百キロに数人しか住んでいない環境で孤独に開拓を始めますが、困難の連続です。一番苦労したのは、腕を骨折した時でした。医者もいない環境の中、片手が使えない状況下で自給自足の生活を独りで数カ月かけて怪我を治したこともあります。
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パタゴニア中に散った開拓民の牧場の中には、近くの氷河が数日の間に急激に前進して、牧場を全て飲み込んでしまったこともあります。私が一番好きな話ですが、当事者としてはなんという悲劇でしょう。
そんな開拓民の歴史が到来して、いよいよ次は「探検」の時代が始まります。
アルゼンチンとチリの間の国境画定の政策などもあり、点在する牧場を拠点に探検家が訪れ、パタゴニアの氷床へと地図が広がることになるのです。
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