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風景写真家・松井章のブログ

写真展「アルパカ」撮影の裏側② サハマ山麓、夜明けに始まる放牧

目次

ボリビア最高峰サハマの山麓にて


前回のブログでは、標高4400mの草原でテントを張り、アイマラ族の家族と過ごしながら撮影した体験について書きました。
今回の舞台は、ボリビア最高峰・サハマ山麓です。

サハマは、古代からアルパカの産地として知られてきました。
その大きな理由のひとつが、山の氷河がもたらす水の恵みです。
冷たく澄んだ水が大地を潤し、この地域には栄養のあるみずみずしい草が育ちます。
アルパカにとって、その草原は命を支える大切な場所です。

この地域で撮影をするにあたり、私はまず、撮影を許してくれる家族を探していました。
けれども、そう簡単には見つかりません。
いろいろな人に声をかけ、話を聞き続けるなかで、ようやく「祖母がアルパカを放牧している」という若い女性に出会いました。
初対面にもかかわらず、彼女は翌朝早く訪ねることを快く許してくれました。

若い世代のアイマラの人たちは、アイマラ語を主に話す中高年世代とは少し異なり、スペイン語を中心に生活しています。おそらく私はスペイン語で彼女と十分に会話ができたからこそ、信頼してもらえたのだと思います。

南米で活動するうえで、スペイン語を話せることの大切さを、こういう場面であらためて実感します。

日の出前に始まる、人とアルパカの暮らし


当日、朝4時ごろ。
まだ真っ暗ななか、車で未舗装の草原の道を進んでいきました。
道案内のために、その祖母を紹介してくれた女の子も一緒に同行してくれました。
祖母の家は草原の奥地にあり、彼女もなかなか会いに行けないそうです。
私の撮影案内を兼ねて、祖母に会うよい機会だと考えたのかもしれません。

家に着くころ、地平線の空がようやく白み始めていました。
まだ夜明け前。
アルパカ達はすでに目覚めていて、座っていますが首をあげて、ジッとしています。

凍てつくような寒さのなかで、静かに朝を待っていると、家からおばあさんと家族がやさしく迎え入れてくれました。
おばあさんはスペイン語よりもアイマラ語を得意としているようでしたが、それでも十分に気持ちは通じ合いました。

やがて空が少しずつ明るくなり、橙色を帯び始めるころ、柵の中にいたアルパカたちがそわそわと動き始めました。
お腹が減っていて、早く草原へ出て草を食べたいのでしょう。

家族も一気に忙しくなります。
女の子もおばあさんの仕事を手伝い、きびきびと動いていました。
この時間帯には、放牧へ送り出すだけではなく、大切な確認作業があります。群れのなかから病気やけがをしているアルパカを見つけ出し、必要があれば消毒薬を塗るのです。
朝の放牧前は、そうした健康状態を見極める大事な時間でもあるのです。

愛おしく育てるベビー・アルパカ


さらに、生後1年に満たないベビー・アルパカが集められた柵では、授乳も行われていました。
成長を安定させるため、哺乳瓶のような容器でミルクを与えていきます。

家族はベビー・アルパカを、まるで小さな子どもを慈しむようにやさしく抱きかかえ、丁寧に飲ませていました。
その光景を見ていると、アルパカが単なる家畜ではなく、家族の暮らしのなかで深く守られ、支えられている存在であることが伝わってきます。

日の出から始まるアルパカ放牧


そうしているうちに、慌ただしく日の出を迎え、太陽が地平線から姿を現しました。
家族が柵の門を開けると、待ちわびていたアルパカたちは、先を急ぐように列をなし、お尻をゆらしながら歩き始めました。
その姿は実に印象的でした。

アルパカたちは、自分たちの向かう先をわかっているかのように、一列になって進んでいきます。
もし進む方向が違ってくると、家族があわてて走っていき、群れの方向を修正します。
太陽がしっかり昇るころには、アルパカたちはもう地平線の向こうへ去っていきました。
早朝の慌ただしい放牧の時間は、そこでひと段落です。

家族は家に入り、一休みする時間のようでした。
私たちはお土産として持ってきていたコカの葉を差し入れました。

こうした暮らしは、この一つの家族だけのものではありません。
その前の世代、さらに前の世代へと、はるか数千年にわたって、アイマラの人々はこの土地でアルパカとともに生きてきました。
途方もない時間の果てに、いまこの朝があります。

それは特別な出来事ではなく、当たり前に繰り返されてきた日常でした。
アルパカと人がともに生きる、その静かで確かな関係。
サハマ山麓の夜明けのなかで、私はその暮らしの一端に触れることができました。

写真展「アルパカ ― アンデスの民と生きる ―」では、こうした時間のなかで出会ったアルパカたちの姿を展示します。
ただ可愛らしいだけではない、厳しい自然と人々の暮らしの中で生きる存在としてのアルパカを、美しいプリントで感じていただけたら嬉しいです。

写真展「アルパカ アンデスの民と生きる」公式ページ

作品解説(ギャラリートーク)を開催します

写真展「アルパカ ~アンデスの民と生きる~」の会期中に、作品解説(ギャラリー・トーク)を開催します。

展示作品を見ながら、アルパカの魅力やアンデスの暮らし、そして撮影の裏側についてお話しします。
日ごとにテーマを変えて開催しますので、ご興味にあわせてご参加いただけます。

ギャラリー・トーク(作品解説)
《開催日》
4月18日(土)・19日(日)・22日(水)※各日2回開催
《時間》
①11:30~12:00
②14:30~15:00
※日ごとにテーマを変えて開催します。

《各回テーマ》
・4月18日(土)|アルパカの生態+作品解説
  アルパカの特徴や毛色などの魅力を、各作品の解説とともにお話しします。
・4月19日(日)|アンデスの暮らし+作品解説
アルパカと人が共生する姿や毛刈りの文化などを、作品解説とともにお話しします。
・4月22日(水)|撮影の裏側+作品解説
アルパカの放牧家族の草原にキャンプして撮影した現場の裏側や、各作品について解説します。

写真展「アルパカ」|ギャラリー・トークの詳細が決まりました

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新刊・写真集「アルパカ ~アンデスの民と生きる~」

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TRANSITで紹介いただきました|写真展「アルパカ」

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