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風景写真家・松井章のブログ

写真展「アルパカ」撮影の裏側①|レアル山群で出会ったアルパカと人の暮らし

目次

写真展「アルパカ」で見てほしい世界


4月17日から開催する写真展「アルパカ」では、原産地である南米・アンデス山脈で撮影したアルパカたちの写真を展示します。
今回の展示でご覧いただくのは、愛らしい、に加えて逞しく生きるアルパカでもあります。

山岳民族の人々とともに、厳しい自然の中で日々を過ごす、生活者としてのアルパカたちです。
アルパカが人とともに生きる現場には、簡単に入れるものではありません。私がその素顔に出会うことができたのは、現地の人々との出会いと信頼という幸運に恵まれたからでした。

▲アルパカ放牧家族

今回展示する写真は、2010年に撮影したものから全部で約30点です。ペルーとボリビアに広く分布するアルパカたちを、それぞれの土地の風土や暮らしの違いとともに見ていただける構成にしています。

なかでも展示の核のひとつとなるのが、ボリビアのレアル山群で撮影したアルパカたちの写真です。

標高4400m、レアル山群での撮影


▲テントの周りを歩くアルパカ
レアル山群は、ペルーとボリビアにまたがるチチカカ湖の近くに連なる山域で、古代からアンデス文明を支えてきた水の恵みをもたらす場所でもあります。アルパカの文化もまた、この地の自然と人々の営みの中で長く育まれてきました。

私は、この山の麓に暮らすアイマラ族のある家族のもとでキャンプをさせていただきながら、撮影を続けていました。標高は4400メートル。冬の夜は氷点下14度ほどまで冷え込みます。
電気も水道もなく、携帯の電波も届かない山奥です。草原と山のあいだに位置するため天気の変化はとても速く、雲は山の背後から次々と湧き上がってきます。聞こえるのは風と川の音、そして時折アルパカが発する小さな鳴き声だけです。

私は草原の川辺にテントを張らせてもらっていました。水をすぐ確保できることは何より助かりますし、100メートルも歩けばアルパカの囲いがあるという、アルパカの生活に寄り添って過ごせる場所でした。

この標高では木が育たないため、薪はありません。燃料になるのはアルパカの糞か、貴重な小さなプロパンガスだけです。

▲キャンプ中のヘルシーな食事。アンデスの伝統的な食材。

アイマラ族の暮らしの中で出会ったアルパカ


受け入れてくれたアルパカ放牧の家族は、ボリビアの首都ラパスから車で約4時間、大草原の道を進み、屏風のようにそびえるレアル山群の谷に、暮らしています。広大な土地を前に、暮らしはとても質素です。自然に抗うのではなく、寄り添うように生きることが、この土地の生活の基本なのだと感じました。

アイマラ族の人々は、アイマラ語という独自の言語を話します。スペイン語も使いますが、英語が通じることはほとんどありません。彼らと心を通わせるには、まずスペイン語が必要です。伝統文化をとても大切にする人々です。

夜の家の中では、家族は小さなベッドとソファーに身を寄せ合って過ごします。その姿は、寒さの中で寄り添うアルパカの親子とどこか重なって見えました。暖房のない家では、人のぬくもりこそが最大の暖かさなのかもしれません。

夜が明けると、アルパカたちは谷に朝日が差し込むまで、そわそわと待っています。家族はせわしなく動き回りながら、一頭一頭の様子を確かめ、その日が始まります。

日中、アルパカたちは人が簡単には届かない高い場所まで登っていってしまいます。
そんなとき、太陽が出れば、私はテントからマットを引っ張り出して、貴重な陽光を浴びながら少し休みます。日差しが出るとテントの中は暑いほどでも、外を吹く風は凍てつくように冷たいものです。天気も気温も、めまぐるしく変わっていきます。

夜になると雲が消え、空には満天の星が広がることも少なくありません。標高4400メートルの澄みきった夜空には、日本では想像もつかないほどの星々が瞬いていました。

写真展の美しいプリントで感じてほしい、リアルなアルパカ


私が目の前にしていたのは、何千年も続いてきた暮らしの延長線上にある風景なのかもしれません。急速に変化する現代の中で、かろうじて残されている奇跡のような時間でした。

写真展「アルパカ」では、そうしたレアル山群の暮らしの中で出会った、生活感あふれるアルパカたちの姿を展示します。可愛らしさだけではない、厳しさ、ぬくもり、静けさ、そして人との深い関わりまで、美しいプリントで感じていただけたら嬉しいです。

会場で一枚一枚の写真をご覧いただくことで、アルパカの表情だけでなく、その背後に広がるアンデスの自然と人々の営みも、より立体的に伝わるはずです。

次回は、もうひとつの核となる撮影地、サハマ山域で出会ったアルパカたちについて書きます。

作品解説(ギャラリートーク)を開催します

写真展「アルパカ ~アンデスの民と生きる~」の会期中に、作品解説(ギャラリー・トーク)を開催します。

展示作品を見ながら、アルパカの魅力やアンデスの暮らし、そして撮影の裏側についてお話しします。
日ごとにテーマを変えて開催しますので、ご興味にあわせてご参加いただけます。

ギャラリー・トーク(作品解説)
《開催日》
4月18日(土)・19日(日)・22日(水)※各日2回開催
《時間》
①11:30~12:00
②14:30~15:00
※日ごとにテーマを変えて開催します。

《各回テーマ》
・4月18日(土)|アルパカの生態+作品解説
  アルパカの特徴や毛色などの魅力を、各作品の解説とともにお話しします。
・4月19日(日)|アンデスの暮らし+作品解説
アルパカと人が共生する姿や毛刈りの文化などを、作品解説とともにお話しします。
・4月22日(水)|撮影の裏側+作品解説
アルパカの放牧家族の草原にキャンプして撮影した現場の裏側や、各作品について解説します。

写真展「アルパカ」|ギャラリー・トークの詳細が決まりました

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