
アルパカの毛刈り
昨年と同じく、9月にボリビアの草原で、同じ家族にアルパカの毛刈りを見せてもらいました。
毛刈りの時期は、土地や家族によって異なります。一般的には、ボリビアでは10月の最初の新月を迎えた後が好まれるそうです。春が始まり、ジャガイモの種まきも始める頃です。毛刈りもこの時期に始めると、気候も良くアルパカが育ちやすいそうです。

理想的な季節があるとはいえ、一つ家族では人数も少なく、ナイフやハサミで刈るので一日で刈れるのは1,2頭ほどです。私が訪れるのは9月でしたが、天気が良く、寒さが厳しくなければ、毛刈りを見せてくれることになりました。
その前日の夕方、ご主人が空を見ながら「明日の朝、毛を刈ろう」と言いました。この土地で生まれ育った経験から、翌朝は毛刈りに向いた天気や気温になると判断したのでしょう。
アンデスを訪れるたびに、天気予報よりも、そこに暮らす人たちの勘のほうが頼りになると感じます。風向きや雲の様子を見て、その場所の天気を驚くほど細かく言い当ててくれるのです。
翌朝は、ご主人の予想どおりの晴天でした。谷に陽が射し始めると、アルパカはそわそわと草原へと出たがります。
空腹のアルパカをそのまま待たせておくわけにいかないので、毛刈りができる時間は朝だけです。
一頭を選び出すと、捕まえるのもひと仕事です。人に触れられることを好まないアルパカを押さえるには、かなりの力がいります。ようやくブルーシートの上に寝かせると、すぐに目を覆い、足を紐で縛ります。

毛を刈るのは、1年に一度、あるいは2年に一度です。ただし、その間隔は地域の土壌や気候、草の種類によって大きく異なります。ご主人の家では、毛が十分に伸びていないアルパカは、1年ごとではなく2年待ってから刈ることもあると教えてくれました。
この日のアルパカは、ずいぶん抵抗していました。以前に見た一頭がとてもおとなしかっただけに、個体によってこれほど違うものかと印象に残りました。
毛を刈り始める前には、いつものように、大地母神パチャママへ祈りを捧げます。
訪問前に私が市場で買っておいたコカの葉を、一人3枚ずつを持ち、感謝の念を持ってお祈りします。そして、コーラを大地に撒き、煙草をふかします。こうして神様に捧げものをした後は、自分たちも少しだけ嗜んで、いよいよ毛刈りに取りかかります。
この日は娘さん夫婦が町へ下りていたので、ご夫婦二人での作業でした。一人がアルパカの頭を優しく押さえ、もう一人がナイフとはさみで毛を刈っていきます。

使うはさみは、文房具屋で売っている、ごく普通のものです。ナイフは、南米のステーキハウスでもおなじみのブラジル製です。身近な道具を使いながら、厚い毛を手際よく刈り進めていきます。

40分ほど経つと、アルパカの体はすっかり細く丸裸になっていました。あれほど大きく見えていた体の、どれほどの部分が毛だったのかがよくわかります。
最後に、目の周りの毛をはさみで整えます。伸びすぎると視界を遮ってしまうからです。ただ、不用意にはさみを入れると、怪我をさせてしまうこともあるそうで、ここはとりわけ慎重でした。
すべて終わって紐を解くと、アルパカは一目散に草原へ。仲間たちのいるところへ駆けていきました。

ブルーシートの上には、一頭分の毛が残っています。刈られた毛はばらばらにならず、ほとんど一枚につながっていました。
毛の塊を丸めていた奥さんが、ふと、毛の塊に顔をうずめました。

今年の収穫に満足したのでしょうか。その仕草が、毛刈りを終えた朝の光景とともに、心に残っています。





























