
長倉洋海 写真展「蒼き空に歌い、草原に横たわれ」

2009年頃、ネパールのヒマラヤ山脈、ナムチェ村で読んだ長倉洋海さんの著書『アフガニスタン 敗れざる魂 ― マスードが命を賭けた国』は、私に大きな衝撃を与えた一冊です。
そのときはエベレスト・ベースキャンプからの帰り道。予備日があったため、確かナムチェに2泊していました。宿泊していた「サクラロッジ」の書棚で偶然この本に出会い、仕事の合間に夢中になって読み切ったことをよく覚えています。
読後の感動を、宿の主人である老シェルパ、ラクパ・テンジン氏に伝えたところ、「持って行きなさい」と言ってくれました。思いがけない贈り物が、本当に嬉しかったものです。

マスードは、ソ連のアフガニスタン侵攻に抵抗した、レジスタンスの英雄です。
この本を通して知ったのは、マスードが優れた軍事指導者というだけでなく、深い知性と人間的な優しさにあふれた人物だったということです。
長倉さんは、マスードと人間同士の深い信頼関係を築きながら、長年にわたって取材を続けていました。日本人写真家でありながら、異国の人々の暮らしや戦いの中に深く入り込み、その素顔を捉えていく。その姿勢に大きく感銘しました。
残念ながら、アフガニスタンの未来を担うはずだった英雄は、2001年9月9日、アルカイダの工作員による自爆テロで暗殺されました。アメリカ同時多発テロの、わずか2日前のことでした。

当時の私は、ラテンアメリカの革命家たちの本にある抵抗の哲学に興味があり、フィデル・カストロやチェ・ゲバラ、メキシコ・チアパス州のサパティスタ民族解放戦線(EZLN)のマルコス副司令官に関する本などを読んでいました。
そんな英雄の中でも、マスードには長倉さんの本を通して、より人間的で優しさにあふれた身近な存在として感じられたのです。
今回訪れた長倉洋海さんの写真展「蒼き空に歌い、草原に横たわれ」では、世界各地に生きる人々のヒューマニズム溢れる写真が展示されています。
その中でも、私にはマスードがひときわ輝いて見えました。
ナムチェの山小屋で偶然出会った一冊。その記憶が、長い年月を経て、写真展の会場で鮮やかによみがえりました。
貴重な写真の数々に出会える、おすすめの写真展です。
**長倉洋海 写真展「蒼き空に歌い、草原に横たわれ」**
– 会期:2026年10月2日(金)~11月10日(火)
– 会場:キヤノンギャラリー S(品川)
– WEB:https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/nagakura-aokisora



























