Loading

風景写真家・松井章のブログ

幻のラクダ“絶滅危惧種“ビクーニャ/ペルー・コンドルの谷へ③

絶滅危惧種・ビクーニャの楽園:サリーナス・イ・アグアダ・ブランカ自然保護区

コルカキャニオンに向かう「サリーナス・イ・アグアダ・ブランカ自然保護区」は、ラクダの楽園です。

リャマやアルパカの放牧だけではなく、野生のラクダであるビクーニャも容易に観察することもできるでしょう。生息数が少ないビクーニャは“幻のラクダ”と言われるほどに珍しい種類なのです。
標高約3500~5000mの高原地帯に位置するこの自然保護区は一見すると荒野ですが、ビクーニャにとってはまさに楽園なのです。


南米大陸には大きく分けると4種類のラクダがいます。
リャマとアルパカの2種類は家畜として人とともに暮らします。どちらも標高約3000mより高い高所に適応しています。他の2種類のラクダ、ビクーニャとグアナコは野生動物で、前者のビクーニャは標高約4000m~5000mのアンデス高原(アルティプラーノ)に生息し、後者のグアナコは低地の乾燥地帯(パタゴニアなど)に生息しています

ビクーニャは南米のラクダの中で絶滅を危惧されている希少種です。ビクーニャの体毛はアルパカよりも高値で取引されるために、乱獲により生息数は激減していました。そのため20世紀後半にワシントン条約により保護対象に指定されます。
今世紀になってから、各国の国立公園や自然保護区で手厚く保護されることで、いまビクーニャの生息数は少しずつ回復して40万頭が生息すると言われます。

ビクーニャの体毛“神の繊維”


標高約4000~5000mの厳しい気候に生きるビクーニャの体毛は、ウールやカシミヤよりも細く、また保温性に優れます。その上質な毛はアルパカを越えることから“神の繊維”として珍重されます。インカ帝国の時代には、ビクーニャの毛は王族だけが着用していたと言われます。今ではビクーニャの毛を使った衣服は数十万円、または100万円を超えるほどに高級な繊維です。

ビクーニャとの共存と狩猟祭“チャク”


ビクーニャは人に懐かないために家畜化できませんでしたが、インカ帝国よりも古い先インカ時代より、人々は年に一度ビクーニャを生け捕りにする「チャク」と呼ばれる狩猟祭をしていました。今もアンデス山脈に残る風習で、ビクーニャの個体数を減らさずに体毛を得る方法として、徐々に復活しつつある伝統の一つです。

生け捕りの方法は、まず人々は長い横隊を組んで徐々に群れを囲んでいき、その輪を狭めていきます。そして最後に道具を使わずに手で生け捕りにして、その場ですぐに毛刈りを行います。
ビクーニャの体毛は1キロ当たり500ドル以上で売れるために、地元の人々にとっては貴重な収入源でもあるのです。

インカ帝国の滅亡後は、この伝統は廃れてビクーニャは乱獲されてしまいます。しかし、20世紀後半に絶滅が危ぶまれてからビクーニャが保護されるなかで、“チャク”は資本主義経済と自然保護の両立の一例として復活したのです。

おそらくインカ以前より数千年に渡り続いたであろう伝統行事「チャク」は、持続可能なビクーニャとの共存方法として、これからアンデス高原の各地で広がっていくのではと思います。

「“コンドルの谷”コルカキャニオン」専用ページ

「ビクーニャ」ブログ関連記事集



「コルカキャニオン」ブログ関連記事集




【動画】ペルーの絶景集:悠久のアンデス山脈と古代文明、世界遺産マチュピチュ

==★チャンネル登録はこちらをクリック★==

フォトギャラリー:ペルー

「ペルー」ブログ関連記事集

「ペルー」ブログ関連記事集

ラクダの楽園:人と共生するリャマ/ペルー・コンドルの谷へ②

コンドルが舞うコルカキャニオン/ペルー・コンドルの谷へ④

関連記事

  1. ペルー旅行の魅力を解説②:インカ帝国の古都“クスコ”の歴史と古代遺跡群

    2020.04.12
  2. パタゴニアの伝説的な探検家 デ・アゴスティーニ神父①

    2021.10.22
  3. チリ暴動による地方の最新状況:パタゴニア・パイネ国立公園

    2019.11.08
  4. メルマガ 6月号:中南米・スペイン最新情報など

    2022.06.16
  5. 早春の北海道:稚内から礼文島へ

    2022.05.31
  6. アラスカ・デナリ国立公園の最深部に滞在:キャンプ・デナリ

    2017.09.13
パタゴニア
2025年6月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

最近の記事

アーカイブ

PAGE TOP