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チリ・パイネ国立公園のグアナコ
冷たく激しい風が吹き抜けるパタゴニアの原野。
風の音しか聞こえない茫漠としたこの草原に、しなやかな肢体と澄んだ瞳をもつ野生のラクダ・グアナコが生きています。荒々しい自然の中でも、不思議と優雅に歩くのは、野生の誇りのようなものでしょうか。
広大なパタゴニアの草原は実はほとんどが私有地に分割されて、牧羊のための大牧場になったという歴史があります。
そのため、同じ牧草を食べるグアナコは駆除の対象として、生息数が激減してしまいました。
パイネ国立公園では、手厚く自然保護がされているため、グアナコたちはそれを知ってか知らずか、ここの草原に集まります。
高台で草原を見下ろせば、割と簡単にグアナコの群れを見つけることができます。
グアナコは標高の低い乾燥地帯に順応したラクダです。アンデス高原に生きる同じラクダ科のリャマやアルパカの祖先とも言われています。
南米では、これにビクーニャという標高4000m以上に生息する野生のラクダを加えて、合計4種がいます。
グアナコとビクーニャは繊細な性格で人に慣れることがなく、今も野生のままで生存しています。
野生動物なので、なかなか接近するのは難しいのですが、パイネ国立公園に住み着くグアナコは、割と人の存在には慣れています。時間を掛けていると、少しずつですが彼らの表情が分かるくらいまで近寄ることができます。
人と生きるリャマやアルパカと異なり、グアナコの群れには監視役がいて、警戒心はとても強いです。草を食みながらも、周囲を見るために頻繁を顔を上げるようで、リャマやアルパカより写真は撮りやすいように感じています。
実際に、天敵のピューマがグアナコの群れを狙っているので、死とは常に隣り合わせです。
しばらく草原でグアナコを追ってその表情を見ていると、生存競争の中に当たり前のように生きる生命の気高さを感じずにはいられませんでした。
※パイネ国立公園:チリ南部パタゴニア。マゼラン海峡のプンタ・アレナスやプエルト・ナタレスが最寄りの町です。