
標高4000-5000mの自然に適応したアルパカの身体
アルパカは、アンデス高原の厳しい自然環境の中で、長い時間をかけてその土地に適応してきた動物です。
標高4,000メートルを超える高地では空気が薄く、昼夜の寒暖差も大きくなります。私が撮影を続けている地域では、乾季の夜には氷点下15度ほどまで冷え込むことがある一方、日中は強烈な日差しにさらされます。
アルパカの身体には、こうした高地で生きるためのさまざまな特徴があります。
まず目につくのが、全身を覆う厚い毛です。密度の高い毛は厳しい寒さや大きな気温変化から身体を守ります。
さらに、目には見えませんが、身体の内部にも高地への適応があります。
アルパカを含む南米のラクダ科動物は、酸素の少ない環境でも酸素を取り込みやすい血液の性質を持っています。アルパカのヘモグロビンは酸素への親和性が高く、高地での低酸素環境に適応した生理的特徴が知られています。
食べ物の利用にも特徴があります。
アンデス高原では、特に乾季になると草は硬くなり、栄養価も低下します。南米のラクダ科動物は、こうした繊維質の多い質の低い草を比較的効率よく消化できる特徴を持っています。高原という限られた環境で生きるためには、「何を食べるか」だけでなく、「限られた草からどれだけ栄養を得られるか」も重要なのです。

草の食べ方にも特徴があります。
アルパカには上顎の前方に、私たちの前歯にあたる切歯がありません。代わりに、下顎の切歯と上顎の「歯板」と呼ばれる硬い部分を使って草を噛み切ります。牛にも似た構造です。
そのため、草を根ごと引き抜くのではなく、地上部分を噛み取るように食べます。南米のラクダ科動物は、この採食方法によって草地へのダメージが比較的小さいとされています。

足もまた、高原の環境に適しています。
馬や牛のような硬い蹄ではなく、2本の指の先に爪があり、その下には柔らかな肉球状のパッドがあります。硬い蹄で地面を強く踏みつける動物に比べ、柔らかな足裏は地表への物理的な負荷がやや小さいという特徴があります。
草を根から引き抜きにくい口の構造と、地面を傷めにくい柔らかな足。
これらは、アルパカがアンデス高原の草地と共に生きてきたことを感じさせる特徴です。
高地では、草が一度失われれば、すぐに元へ戻るわけではありません。低温や乾燥、短い生育期間という条件の中で植物はゆっくりと成長します。そのため、植生を残しながら利用することは、この土地で生きるうえで大きな意味を持っています。
どれほど環境に適応した動物であっても、自然の許容量を超えて生きることはできません。
その許容量も常に変化しています。
草の量、水の量、放牧できる土地の広さ。そして近年進む気候変動や温暖化。アルパカと人々の暮らしを追っていくと、身体の適応だけでは乗り越えられない問題も見えてくると思っています。
次回は、私が実際に放牧を手伝ってみて見えた、家族ごとの放牧の違いや、アンデス高原の重要な湿地「ボフェダル」、過放牧、干ばつや水環境の変化について書いてみたいと思います。





























