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ペルーで品種改良された白いアルパカ
アンデス高原で目にするアルパカは、その地域によって、色が異なることに気づきます。
アルパカやリャマはラクダ科の家畜ですが、かつて数千年前は野生でした。今も南米大陸に生息する野生のグアナコであるグアナコやビクーニャから分化したと言われています。
人と暮らすようになったラクダが、品種改良を経て今の姿となったのです。主に、標高4000~4800mのアンデス高原を有する、ペルー・ボリビア・アルゼンチン・チリ・エクアドルに生息します。
アルパカは広大な草原の放牧地(エスタンシア)で、アルパケーロ達(アルパカの放牧を生業とする人々)によって放牧されています。家畜とはいえ、放牧の一日を見ていると、人と共に暮らす家族の一員というように見えます。彼らは自分の判断で一日動き回り、日が暮れるころには自分たちで人が暮らす家に戻って来るからです。
ボリビアでは様々な色のアルパカがいるのですが、ペルーでは白いアルパカがほとんどです。
この色の違いには大きな理由がありました。
もともと様々な色のアルパカがいるのですが、インカ帝国の時代には白いアルパカは珍重されていたという歴史はあります。
しかし、現在のペルーのアルパカの「白色化」には、20世紀後半の国際取引が大きく影響しています。
繊維におけるシェアは低いとはいえ、世界中でアルパカの毛が服や敷物に使用されるようになりました。そうすると、染色に有利な「白色」の毛の需要が急激に高まったのです。
羊毛よりもはるかに細くて保温性のあるアルパカの毛は、世界中で高値で取引されています。
その需要に応えるために、特にペルーでは1960年代からアルパカの「白色化」への品種改良が進んだそうです。国際経済により、アルパカの生態は大きく影響を受けて、この約60年ほどで、ペルーのアルパカのほとんどが白色となりました。
これでアルパカの毛を高値で売れるようになりましたが、「有色」個体のアルパカが著しく減少してしまいました。黄色や茶色が大部分を占めるアンデスの草原に生きるアルパカにとっては、本来は草原に同化する色のほうが生存しやすいはずです。今までのアルパカの進化の過程とは異なる急速な変化と言えるでしょう。
アルパカの毛の色は実に多様で、茶色や黒、白やコーヒー色など20色近くもあり、さらに模様を組み合わせると、40種くらいの色彩パターンの毛があるそうです。
現在のペルーでは、再び有色のアルパカを増やそうという運動も徐々に広がっています。