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パタゴニアに生息するラクダ:「グアナコ」の生態

南米の4種類のラクダとは

「南米のラクダ」といえば、リャマやアルパカをイメージされるが、南米には4種類のラクダが生息している。

アンデス山脈の高原(アルティプラーノ)に生息するのが、リャマ・アルパカ・ビクーニャの3種類で、それぞれ生息する標高を住み分けている。最も高所に順応しているビクーニャは4000-5000mに住む希少なラクダなのだ。

▲アルパカ(ペルー)

もう1種類のラクダは、海抜0-1000mの低地に住む「グアナコ」だ。アルゼンチン、チリの草原に広く分布して、主にパタゴニアに生息している。低地に住むラクダとはいえ、乾燥と低温を好む点は他の3種類と同じだ。

緑豊かな場所には馴染まず、ラクダは荒野に適応することで進化してきたストイックな動物だ。ユーラシア大陸に生息するラクダと近縁で、そもそもラクダの祖先は北米らしい。
今では北米にラクダは生息していないので、拡散した先、中央アジアと南米で別々の進化の道を歩み、繁栄してきたのだ。

パタゴニアの草原のシンボル

広大なパタゴニアの荒野を悠々と歩くグアナコの姿は、パタゴニアにいれば誰もが見る景色だ。
牧羊の発展に伴い、グアナコの草原は、大牧場(エスタンシア)として有刺鉄線によりくまなく分割されてしまった。羊の好むコイロン草はグアナコの好物でもあることから、害獣として乱獲された時代の始まりだ。
絶滅を危惧された時代を経て、今ではグアナコは牧場の中も闊歩している。
あまりにも広大なパタゴニアの草原では、草は無限に生えていて、羊とグアナコは十分に共存できると、ようやく人は理解できたわけだ。

今では、どこかユーモラスな表情を浮かべながら、のんびりと草を食む姿はパタゴニアのシンボルなのだ。人をあまり恐れないが、人との一定の間合いがあり、それよりも中に踏み込んでしまうと駆け足で逃げてしまう。その時にグアナコが本気で走ると馬並みに機敏なことを知るものだ

群れで生きるグアナコの生態

グアナコはハーレムを形成して群れで生活している。数十頭もの群れで移動生活をしている。群れの中に身を置くと、草を食む音やじゃれあう音や声が聞こえてきて、思った以上にグアナコの群れは賑やかだ。
見晴らしの良いところには、見張り番をする役のグアナコがいて、敵が近づくと警戒音を発して注意を呼び掛ける。一定の秩序があり、まるで示し合わせたかのうように、人には計り知れないコミュニケーションを取りながら群れは移動を続ける。

“はぐれ”グアナコも時々目にする。おそらく群れを追われた雄のグアナコだ。秋の繁殖期には雄同士の喧嘩を目にするが、負けたグアナコは群れを追われて“はぐれ”グアナコと化すわけだ。
人間社会でいえば、いわばフリーランスに当たるグアナコは、自分の面倒を自分で全て見るわけで、端から見ていてもその孤独さを感じてしまう。
群れに勝者として返り咲いて欲しいものだが、群れからの保護を離れたグアナコの生存はなかなか厳しいだろう。

グアナコの唯一の天敵:ピューマ

動物の種類が少ないパタゴニアで、彼らの唯一の天敵はピューマだ。体長2~3mに達する彼らの主食がグアナコなのだ。

パタゴニアの草原のある部分には、グアナコの死骸を多く見受けることがある。そこはピューマの縄張りなのだ。広大な縄張りのどこかで、ピューマは息をひそめて我々さえをも監視しているのだろう。人に危害を与えることはないので心配は無用。私が知っている限りでは、人を襲った例は一つだけだ。その時はグアナコの毛皮を被っていたので、グアナコと間違えられて襲われたらしい。
人の前にめったに姿を現さないほどに用心深いが、おそらく彼らは岩陰に身を潜めて、縄張りに侵入してきた人をじっと見ている。

グアナコの楽園・パイネ国立公園

チリの「パイネ国立公園」は、グアナコの楽園として知られる。グアナコはおそらく自分たちが最も安全な場所を本能的に知っているのだろう。パイネ国立公園には実に大量のグアナコが生息している。ここでは、人とグアナコの間合いはさらに小さいので、ゆっくり身をかがめていれば、数メートル傍まで接近することも可能だ

保護されていることを知ってか知らずか、国立公園内ではグアナコもまた寛容に人を受け入れる

グアナコの墓場

いつかパタゴニアの草原を車で移動しているときに、近くにグアナコの墓場があると聞いたことがある。アフリカ象の墓場のように、グアナコもなぜかある特定の場所で死を迎えるらしい。

そんなグアナコの墓場がこの先にあるのだと、遠く地平線を指さされたことがある。アルゼンチンの南部パタゴニア、カラファテからエルチャルテン村に走る一本道を疾走しているときのことだ。

今でもその墓場の真偽は分からないのだが、いつかグアナコが最後を迎える墓場を目にしてみたい。

そんな絵空事のような話も、パタゴニアでは実際にあり得そうなほどに、現実と空想が交わる不思議な空間でもあるのだ。

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