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風景写真家・松井章のブログ

ペルー:コンドルが舞う谷、コルカ・キャニオンへ


コンドルが舞う姿を間近で見るために、世界中からツーリストが“コルカキャニオン”へやってきます。
これほど至近距離でコンドルを見ることができるのは、広い南米でもおそらくここだけでしょう。
天候や風など、コンドルが現れるために必要な自然条件はもちろんあるのですが、圧倒的な高確率でコンドルを見ることができます。
アンデス山脈のいたる所でコンドルは見れますが、コルカキャニオンでのコンドルとの距離感の近さを考えると、はるばる訪れる価値のある場所です。

前日にアレキパを出て、山麓のチバイ村(3600m)に宿泊しました。
翌早朝、チバイを出発します。
コンドルがコルカキャニオンの展望台で舞う時間帯は、一日の中でも朝のある時間帯だけだからです。
前インカ時代から受け継がれてきた段々畑が、あたかも“地図上の等高線”のように見事にびっしりと山麓を埋め尽くしています。
朝日の斜光の一線が谷に差し込む時間帯は、段々畑が最も美しく映える時間帯の一つでしょう。

標高が上がるにつれて、右側は切れ落ちるような断崖となります。
この巨大な大地の亀裂がコルカキャニオンです。
グランドキャニオンよりも大きいと言われるほど、巨大で深い渓谷です。
コンドルが現れる展望台は、断崖の縁沿いにある“クルス・デル・コンドル”展望台です。

展望台は断崖にせり出すような岩棚の上にあります。
眼下は谷底へ切れ落ちるような断崖で、真下が望めないほどにせり出した展望台で、コンドルを待ちます。
この断崖の下に、コンドルの巣があります。
朝一番の陽光が谷底へ差し込み始めると、気温が一気に上がることで、上昇気流が発生します。
コンドルはほとんど羽ばたくことのない、グライダーのように滑空する鳥ですので、風が必須です。
展望台でも、下から吹きあがる風を感じたのなら、コンドルを見れる確率は高いのです。
そして天気が良ければ、さらに出現する確率は高くなります。
上昇気流が発生するような天候には晴れる必要もあるので(もちろんコンドルが飛ぶためにも)、乾季4月~9月がコンドル見学のシーズンです。

風が吹き始めると、コンドルが飛び始めます。
まずは、展望台よりもずっと下の方です。
展望台は断崖からせり出しているので真下は見れませんが、コンドルがちらちらと見えてきます。
徐々に上に上がって来ると、コンドルは目線の高さを飛ぶようになります。
あまりにも近くを飛ぶので、巨大なコンドルが通り過ぎる時に、風を切る音が聞けるほどです。

何度も繰り返し、不思議と展望台の周辺だけをクルクルと回りながら、徐々に上昇を続けます。
コンドルにとって、この朝一番の滑空は、ウォーミングアップのようなものに思えます。
餌を探すわけでもなく、楽しむように、まさに“悠々と”空を舞っています。
羽根を広げると3mに達する巨体が空を舞う姿は圧巻の限り。
この存在感には、コンドル独特の気高さを感じます。

コンドルの中には、幼鳥の姿も目にします。
体長が少し小さく、首を覆う白い毛が無いので、すぐに幼鳥であることが分かります。
親鳥と思われる成鳥と幼鳥が、空でじゃれ合いながら滑空していたりします。
飛び方を教えているのでしょうか。
成鳥に比べて、滑空を長く続けられない幼鳥が、展望台の目の前の岩に着地しました。
小さな岩の上に、三羽の幼鳥が次々と着地して、しばらく休んでいました。
三羽が岩の上で押し合いへし合いをするうちに一羽が飛び立つと、次々と幼鳥は飛び立ち、延々と頭上を滑空していました。

上昇気流に乗り、さらに上に上がっていき、空を見上げるような時間帯になると、“ショー”の時間帯はそろそろ終わります。
コンドルは、餌となる死肉を探して、方々に散っていくからです。
約1時間ほど、コンドルによる静かな“ショー”に、展望台に集まる人々は歓声を上げていました。

ふと近くの花を見ると、ハチドリが飛んでいました。
このハチドリは世界最大のハチドリで、体長は約20cmほどもあります。
ホバリングして空中に静止しながら花の蜜を吸う姿を見れたおかげで、“ショー”を締めるようなエンディングとなりました。
コンドル出現は、その日の天候や風の状況に左右されます。
何羽のコンドルが現れるかも運次第です。
多い時には15~20羽も現れますが、少ない時には5~10羽しかいないこともあります。
確実にコンドルを見たいのであれば、思い切ってチバイに2連泊して2日連続で展望台を訪れるのも良いでしょう。

ペルーの古都アレキパから、コンドル舞うコルカキャニオンへ

ペルーの白亜の古都「アレキパ」:青と紅の聖カタリーナ修道院

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